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2023年04月24日

13期卒業生インタビュー 〜先輩・同期との濃密な関係により、起業家として大きく成長〜

ASACストーリー

先輩・同期との濃密な関係により、起業家として大きく成長

 
東京都豊島区のアパート「トキワ荘」からは、手塚治虫さんや石ノ森章太郎さん、赤塚不二夫さんをはじめ、日本を代表する漫画家が巣立っていた。現代の起業家にとってトキワ荘的な場が、創業予定者や創業間もないスタートアップ企業の支援拠点「青山スタートアップアクセラレーションセンター(ASAC=エーサック)」だ。東京都はこれまで、13期にわたってASACでアクセラレーションプログラムを主催し、約130人の起業家が卒業。同期で切磋琢磨し合いながら、先輩に触発され起業家として成長するという強力なエコシステムが構築されている。13期卒業生である野尻悠貴・Eifer(アイファー)代表、和田亮佑・カミカグ代表、小林能輔・フクスケ代表に、プログラムを通じ学んだことなどについて語ってもらった。
(司会はデロイトトーマツベンチャーサポートの會田幸男=ASACアクセラレーションプログラム業務責任者)


株式会社Eifer
代表取締役
野尻 悠貴


株式会社カミカグ
代表取締役
和田 亮佑


株式会社フクスケ
代表取締役
小林 大介


デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社
ASACアクセラレーションプログラム業務責任者
會田 幸男
 

東京都が主催しているという安心感

 
――ASACを知ったきっかけや、アクセラレーションプログラムに応募した理由について教えてください
 
野尻 私は起業家のコミュニティーを大事にしていますが、一般的なアクセラレーションプログラムは、色々としがらみがあります。これに対し、ASACのプログラムは、全くそういったものがありません。メンターや大企業の方々が「東京から素晴らしいユニコーン企業を誕生させるぞ」と、純粋に熱量をもってサポートしてくれるところに共鳴しました。
和田 注力している分野が、他の支援機関が支援しづらいものづくりや社会課題などの分野となっているところにひかれました。「自分たちにとってレベルが高いのでは」といった印象はあったのですが、起業前の時期でしたし損にはならないだろうという考えで応募しました。東京都が主催しているという安心感もありました。また、1人で取り組むと、ビジネスの形にするのは難しいという葛藤があり、アクセラレーターの力を借りて資金調達などを進めたほうがいいと判断しました。
小林 実は創業して3カ月目に応募したのですが、落選しました。その後、副業事故を防止するという現在のサービスへと事業を方向転換しましたが、新たな方向性とASACのプログラムは相性がいいのではと思い、再び応募して採択された次第です。また、メンターからのフィードバックは、自分の弱い部分を補ってくれるはずだという期待感もありました。
 

起業家としての心構えなど、幹の部分の解決に向けて伴走

 
――応募時にはどういった課題を抱えていましたか
 
野尻 資金調達はうまくいっていましたが、経営者としての器は小さく、「起業家としてどう歩むべきか」「何を信念にして歩んでいけばいいのか」といった課題がにじみ出ていました。テクニカルな側面だけではなく、こうした幹の部分の解決に向けて伴走していただいたのは大きい。現在、ようやく事業が軌道に乗ってきましたが、その半年間の経験があったからだと思います。
 

同じ会社の社員と事業を進めているような感覚

 
――計19回にわたってアクセラレーターのハンズオン支援が行われましたが、いかがでしたか
 
和田 頭の中を整理するためにも事業計画を策定することを、一つのゴールとして設定していました。私の場合、言語化を苦手としていましたが、根気強く整理していただきました。弊社は年下のメンバーが多いため、ちょっと高い目線からの壁打ち機会がなかなかありません。そうした中、定期的に会話の機会を設けられたことは大きかったです。
小林 当社のサービスは新しく、世の中にはあまりないと思っていました。そのため、「他に同様のサービスはないのか」「他の業界だったら、どういったサービスに相当するのか」について、多角的な視点に基づき一緒に検証していただきました。事業展開に参考となる海外のスタートアップの情報も紹介してもらいました。「同じ会社の社員と一緒に事業開発を行っているのでは」といった感覚に陥るほど、濃密な時間を過ごせました。

卒業生も加わるボランタリーなエコシステムを構築

 
――プログラムの中で印象に残ったコンテンツは何でしょう
 
野尻 卒業生の話です。エクイティに対する考え方など本質的な部分を含めて、「格好いいなあ」と感じるよりも手触り感のある成長ストーリーを話してくれました。とても刺激になったし、先輩の姿に勇気づけられました。そうしたボランタリーなエコシステムに感動を覚え、次世代のメンバーにお返しできるように結果を残したいという思いが醸成されました。
 
――確かにASACの存在価値は卒業生で、同期という横の関係だけではなく縦のラインでも濃密な関係を構築できている点がバリューです。リアリティーがある話から学び取り、価値を感じてもらえたのはよかったです
 
和田 私は採択された他企業と比較すると、プロジェクトが進んでいないという自覚があったので、「他のメンバーがどういったプランを作成しているのか」や「それに対してどういったフィードバックをもらえているのか」といった点を、とくに注視していました。
小林 ユーザーマップの作成など、シード期の起業家にとって必要なコンテンツがそろっており、「この部分はキャッチアップできていない」といった振り返りにもなりました。また、同期同士のワークショップも重要でした。進捗状況や課題になっている部分を聞いたりするのは、地味なことかもしれませんが、とても刺激的な取り組みです。
 

ASACで培った横のつながりはなくてはならない存在に

 
――横のつながりがもたらす価値についてお聞かせください
 
野尻 同じような志を抱いて挑戦し、社会に対しコミットしている人たちのコミュニティーは、時間の経過に伴い熟成され、自分の人生にとって不可欠なものになります。ASACで培った横のつながりというのは、5年後、10年後と歳月を重ねる中で、なくてはならない存在になるはず。そういったコミュニティーはなかなか存在しません。運営者側の熱量などが、こうした環境づくりに貢献しているのだと思います。
 
――これからも皆さんがフラットな形で集まって、同じ起業家目線で話し合えるような場を形成してほしいというのは、プログラムの狙いでもあります
 
和田 私が携わっている建築という分野では、ビジネス関連のコミュニティーがあまり存在しません。ASACにはさまざまなジャンルの人が集まっているため、私自身の人間としての幅も広がり、とても刺激になりました。また、ピッチ資料を見せてくれるなど「give」する文化が浸透している点もうれしいですね。このご縁を大事にし続けたいです。
小林 プログラムに参加している起業家は「こうした課題があり、このように解決すればよい」といった信念を抱いています。それらの課題は私にとって新鮮で、話していて面白いですね。そこが通常のビジネスコミュニティーとは異なるポイントです。これから事業を拡大するに当たって課題に直面したとき、同期には色々と相談できます。心強い存在です。
 

ベンチャー経営の醍醐味を味わえるようになった

 
――プログラムの成果、達成目標は、どのような形で事業に結び付いていますか
 
和田 まだまだ始まったばかりで、皆さんに比べるとフェーズは浅いですが、「会社化
するのか」といったところから議論がスタートしただけに、ここまで話が進んだことは驚きです。資金も調達し、ダンボール家具の生産拠点も開設したため、あとは事業を進めるだけです。スタートラインに立てるようになったのは、すべてASACのおかげです。
野尻 成功するまでやめないし「東京を背負ってやってやる」といった意識が改めて強くなった半年でした。また、成果報告会の時に表彰してくださった企業や、紹介していただいた会計士の方々との連携も進んでおり、ASACの恩恵を受けています。ジュエリー業界のWeb販売支援などを展開していますが、まだEC化されていない領域のデジタル化に取り組む姿勢は、もがきながら確立されたものなので、そこは大きな財産です。
小林 会社が当初目指していたHR業ではなく、リスクインテリジェンスの会社になり、領域が広がりました。ASACで考えたプロダクトへの相談が増え、政府による副業ガイドラインの改定に伴う問い合わせも活発で、「皆から感謝される」というベンチャー経営の醍醐味を味わうことができています。Web3企業のリスクマネジメントも増えていますが、最先端の領域にサービスを提供できているのもASACの成果です。
 
――本日はお忙しい中、ありがとうございました。貴重な話を伺うことができて感謝しています。また何年後かに集まる機会を設け、成長した姿を確認し合うことができればと思っています

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